次世代薬局研究会の代表理事に就任いたしました武政文彦です。
2021年12月に急逝された藤田道男氏の後を引き継ぎ、大役をお引き受けいたしました。
藤田氏とは、私が40年ほど前に東京湯島の水野薬局在籍当時、有志によるアメリカ西海岸の薬局スタディツアーでご一緒させていただいたのがご縁の始まりです。
私の役目は、次世代薬局研究会の設立理念を引き継ぎ、若い世代へ橋渡しをすることと、組織の基礎固めだと認識しています。幸い、これまで会の事業を担ってこられた方々はもちろんのこと、新たに加わってくださる方々も、熱い思いを携えてこの研究会に関わり始めてくださっています。
本研究会は「ヘルスケアのファーストアクセスの場としての存在価値を明確に打ち出し、薬局の底力を発揮すると同時に新たな役割を創出する」という理念で、活動を開始いたします。地域薬局は、住民が健康相談でまっさきに訪れる場所、というかつての価値が薄らいでいます。しかし、この研究会は「昔にもどろう」と訴えるわけではありません。
もともと地域薬局が持っている底力を掘り起こすと同時に、現在の薬局が住民から必要とされる、あるいは名乗り出ることで住民の認識を変えるという、住民からの期待値を高めることで新たな役割を生み出すことが会のミッション(使命)だと考えています。
新型コロナウイルスがまだ猛威を振るう現在にあって、「微熱があり不安だ」「抗原検査を受けたい」「地域で集会を持ちたいが感染予防対策の助言がほしい」など、地域薬局ならびに薬剤師が関われる役割が日増しに叫ばれるようになりました。ただこれは顕在化したに過ぎず、本来の薬局、薬剤師は、地域の人々に寄り添い、その健康生活を「守る、創る、支える」ことをリードしていかなければならない立場にあると考えます。
そのためにさまざまな検討を加え、地域における医療関係者だけではなく、地域の日常生活を支える他職種の方々、さらには地域コミュニティの協力も得ながら、役割の拡大とそれによって生まれるビジネスチャンスの創出の実現につながるような、骨太なアクションプランを提案していきたいと考えています。
また、変革期には、大きな「志(こころざし)」を抱く指導者が求められます。それには次世代において、さまざまな勉強会や研究会を主宰するような指導層づくり、あるいは行政、政治、教育分野を目指す指導者養成が必要不可欠です。本研究会では、そのための活動を推進します。
また、若手薬剤師及び薬学生などが地域において活躍することのモチベーション喚起についても事業の柱の一つとし、薬学教育関係者への積極的な情報提供を含め、見て触れて感じることのできるようなさまざまな企画を検討し、実現してまいります。
この機会をとらえ、以上申し述べたような点をベースにした事業を展開するために、知恵を出し合い、知見を広げ、事に臨んでは国や自治体の政策づくりにコミットしていけるような特徴ある研究会にしたい、それが私の望みです。
ご賛同いただける方が一人でも多く本研究会に加わっていただけることを期待しております。
武政 文彦(たけまさ・ふみひこ)プロフィール
1954年、岩手県花巻市東和町生まれ。79年、東北大学薬学部卒業後、医薬分業制度の草分けともいえる水野薬局に勤務。医薬分業制度確立に取り組む中で、患者志向の医療を目指して、自分たちでアイデアを持って集まり、議論して、自らシステムづくりに関わることを目的として水野睦郎氏が呼び掛けた「開局薬学研究会」に参加。クリニカルファーマシー(当時)の発祥の地である米国西海岸のスタディツアーも敢行している。故藤田道男氏も記者として同行するなど、日本の分業制度草創期に共に同じ課題に取り組んだ同門の認識を持つ。
その後、中央薬事審議会一般用医薬品部会臨時委員や日本薬剤師会一般用医薬品等委員会委員としての活動を主体にする。薬局薬剤師のプロフェッションを学ぶ原点は一般用医薬品であるとの立場に立って、一般用医薬品に関わる法改正の意味や、薬局薬剤師の実践すべき活動、現状からの打開策などを指し示した論文は数多い。
大きな転機となったのは、水野薬局を辞して帰郷し、実家の薬局を継いでから。薬局業務や花巻市薬剤師会の活動に携わる傍ら、コミュニティの再生に関心を寄せ、力を注ぐ。現在は、春と秋に地元で開催する土澤アートクラフトフェアの実行委員長を務めるなど、アートのまちづくりにも携わる。